摘んで、仕込んで、旬を食う

農村万能図鑑

農村という生態系・文化・暮らし・命の循環を丸ごと学ぶ一冊へ。全28章はどれも「かんじる・たどる・つなげる・いただく・かえす」のいのちのメガネと、パーマカルチャーという設計のレンズでつながっています。各章の末尾には、知る先の「つぎの一歩」を置きました。

鉄則 ── 確信が持てない草は、採らない・食べない・人にあげない。毎年、有毒植物の誤食事故が起きています。初めての種は必ず複数の資料や詳しい人に確認を。

① 農村の基礎知識

農村とは、田畑や里山とともにある暮らしの単位です。ただ野菜を作る場所ではなく、水路や雑木林や神社まで含めて、食べもの・燃料・資材・文化を生み出してきた「人が手入れをすることで保たれる生態系」でもあります。

日本の農村は2000年以上の稲作の上に成り立ち、田んぼを中心に水を分け合う仕組み(水利)と、共同作業(結い・出役)の文化を育ててきました。戦後の機械化と化学肥料で姿は大きく変わりましたが、暦に沿って仕事が回る骨格は今も同じです。

その骨格が二十四節気です。太陽の動きで一年を24等分した暦で、「立春に味噌を仕込み、芒種に田植えをし、霜降に柿を吊るす」というように、農村の仕事はいまも節気で覚えるのがいちばん実用的です。

そして農村の時間は、時計よりも先に自然が刻みます。一日は鶏の声と日の出で始まり、一年は「ノビルが出たから春」「赤とんぼが下りたから稲刈り」と、生きものと季節で進む。この図鑑のカレンダーがぜんぶ月で書かれているのは、そのリズムに合わせるためです(㉗幸せのものさしへ)。

二十四節気と農事ごよみ

立春2月4日ごろ春支度の始まり。味噌の寒仕込み最盛
雨水2月19日ごろ雪が雨に。ジャガイモの植え付け準備
啓蟄3月6日ごろ虫が目覚める。畑起こし・種もみの準備
春分3月21日ごろ種まき本番へ。彼岸、ぼたもち
清明4月5日ごろすべて清く明らか。育苗と山菜の季節
穀雨4月20日ごろ穀物を育てる雨。夏野菜の植え付け準備
立夏5月6日ごろ夏野菜の定植。ノビルと新緑の季節
小満5月21日ごろ麦が実り、生きものが満ちる。田植え準備
芒種6月6日ごろ田植えと梅仕事。一年でいちばん忙しい
夏至6月21日ごろ昼が最長。草との競争が始まる
小暑7月7日ごろ梅雨明けへ。田の中干し・草取り
大暑7月23日ごろ暑さの頂点。梅の土用干し・夏野菜最盛
立秋8月8日ごろ秋冬野菜の種まきが始まる
処暑8月23日ごろ暑さがおさまる。台風に備える
白露9月8日ごろ朝露が光る。稲穂が垂れてくる
秋分9月23日ごろ稲刈りの季節。彼岸、おはぎ
寒露10月8日ごろ芋掘り・木の実拾い・きのこの季節
霜降10月23日ごろ初霜への備え。柿の収穫、柿酢仕込み
立冬11月7日ごろ干し柿を吊るし、たくあんを漬ける
小雪11月22日ごろ落ち葉集めと堆肥づくり。薪の点検
大雪12月7日ごろ本格的な冬。保存食と道具の手入れ
冬至12月22日ごろ昼が最短。ゆず湯とかぼちゃで無病息災
小寒1月5日ごろ寒の入り。寒仕込みの季節が始まる
大寒1月20日ごろ一年で最も寒い。味噌・醤油の仕込み

② 農業の基本 ── 土を知る

土とは何か

土は「砕けた岩」ではありません。鉱物・有機物・水・空気、そして無数の生きものの集合体です。スプーン一杯の畑の土に、数億〜数十億の微生物が住んでいます。理想の畑土は、固体(鉱物45%+有機物5%)と水25%・空気25%が半々といわれます。

単粒構造 団粒構造 すき間=水と空気の道 固く締まり、水も空気も 通りにくい ふかふか。保水と水はけを 同時にかなえる

団粒構造 ── ふかふかの正体

小さな土の粒が、腐植や微生物の分泌物、ミミズのフンを「接着剤」にして集まった塊が団粒です。団粒どうしのすき間が水と空気の通り道になるため、雨を蓄えつつ水はけがよいという矛盾したような性質が両立します。堆肥を入れる最大の目的は、養分そのものより、この団粒を作る生きものたちを養うことです。

微生物と菌根菌 ── 見えない相棒

細菌・糸状菌・放線菌などの微生物は、落ち葉や堆肥を分解して養分に変える「分解者」です。種類が多いほど特定の病原菌が暴走しにくくなります。なかでも菌根菌(AMF)は根に住みつき、根の何倍もの範囲に菌糸を伸ばして、リンや水を集めて植物に渡し、代わりに糖をもらう共生関係を結びます。

菌糸=根の延長 糖を渡す リン・水をもらう 耕しすぎとリン酸のやり過ぎは、この網の目を壊す

農法の見取り図

「どれが正解」ではなく、土の状態と目的で選ぶものです。共通する土台はひとつ ── 土の生きものを飢えさせないこと。

農法肥料農薬耕起ひとこと
慣行栽培化学肥料中心使う耕す安定した収量。日本の標準的な作り方
有機栽培堆肥・有機質肥料化学合成農薬は不使用耕す土の生きものを育てる。有機JAS認証制度あり
自然栽培基本入れない使わない最小限土と草の力を引き出す。移行に数年かかる
不耕起栽培流儀による流儀による耕さない団粒と菌糸の網の目を壊さない考え方

緑肥 ── 育てる肥料

作物の合間に育てて土にすき込む「育てる肥料」。エンバク(有機物の補給と一部センチュウの抑制)、ヘアリーベッチ(マメ科で空気中の窒素を固定)、マリーゴールド(センチュウ対策)、ソルゴー(防風の壁と天敵の住みか)が定番です。花が咲く前に刈り倒して浅くすき込み、2〜3週間おいてから次の作付けをします。

③ 野菜図鑑 ── 定番40種

果菜・豆・葉茎・根菜イモに分けた40種。数より「読めば実際に作れる」再現性を大切に、播種・定植・収穫の時期、病害虫、保存、そして種取りまで。時期は中間地(関東平野部)の目安で、品種と年によりひと月ほど前後します。

種まき(育苗) 植え付け・定植 収穫

食べられる雑草

道ばたや畑のまわりの25種。カレンダーの淡色は生えている時期、濃色は食べごろです。

食べごろ(採取適期) 生えている時期 今月(7月)

⑤ 山菜図鑑

雑草より一歩、山や林に入って出会う春の王様たち。カレンダーの緑は採取適期です。山菜こそ有毒植物との混同事故が多いので、下の「危険なそっくりさん」と必ずセットで。

⑥ キノコ図鑑 ── 栽培と知識の章

大前提 ── 野生キノコは素人判断で食べない。キノコの同定は山菜よりはるかに難しく、プロでも間違えます。この章は「自分で栽培する」と「危険を知る」ための章です。

代表的な毒キノコ ── 知識として

毒キノコ間違えやすい相手知っておくこと
ツキヨタケヒラタケ・ムキタケ・シイタケ日本の中毒原因の第1位。裂くと柄の根元に黒いシミ、暗闇でヒダがぼんやり光る。ブナの倒木に群生。
クサウラベニタケウラベニホテイシメジベテランでも間違える難関ペア。「見分けに自信がある」が一番危ない。
カエンタケベニナギナタタケ猛毒で、触るだけで皮膚がただれる。ナラ枯れ跡地で増加中。見つけても絶対に触らない。
ドクツルタケ白い食用キノコ全般致死率最高クラス、通称「破壊の天使」。白い野生キノコには手を出さないのが鉄則。

迷信に注意 「縦に裂ければ食べられる」「虫が食っていれば安全」「ナスと煮れば毒が消える」── すべて迷信です。図鑑の写真と似ていても素人同定は危険。食べるのは自分で栽培したキノコだけに。

拾って食べる木の実

木そのものは一年中あるので、カレンダーの緑色は「拾える・収穫できる時期」を示しています。落ちた実を拾えるものは、公園・街路樹・神社・河川敷でも見つかります(採取の可否は場所のルールを確認)。

⑨ 土地・自然 ── 里山の見取り図

農村の風景は、ぜんぶ役割を持った「装置」です。奥山から川まで、水の通り道に沿って暮らしが並んでいます。

⑪ 農作業大全 ── 基本の手仕事9つ

種まきから保存まで、どの野菜にも共通する基本動作。それぞれ「なんのためにやるか」から覚えると応用が利きます。

⑫⑬ 仕込みもの ── 保存食と発酵

採ってきたもの・畑のものを、時間をかけてごちそうに変える台所仕事12品。カレンダーの緑色は「仕込み・作業をする時期」、できあがりまでの期間は各項目に書いてあります。

酒税法メモ ── 家庭での酒づくり(どぶろく等)は違法です。梅酒は「アルコール20度以上の市販の酒で漬け、自分で飲む」なら合法(ぶどう・米などで漬けるのは不可)。松葉サイダーなどの自然発酵飲料は、アルコール分が1%を超える前(軽い発泡の段階)で発酵を止めて冷蔵してください。

野良仕事 ── 土と田んぼ

食べる暮らしの土台になる、土づくりと米づくり。落ち葉・刈り草・米ぬか・生ごみ・灰 ── 出てくるものを循環させるのが農村の知恵です。

米づくりの十二ヶ月

中干し(7月)は土に小さなひびが入るまで水を抜き、根を深く強くする大事な作業。 はざ掛け(天日干し2週間)は手間だが味が乗る。 時期は関東平野部の目安で、九州はひと月ほど早く、北海道・東北は遅くなる。 田んぼがなくてもバケツ稲(バケツ+土+苗1株)なら同じ暦で一通り体験できる。

野外の技 ── 火と縄

道具に頼りきらない基本の技。火は「準備が九割」、縄は「よく使う5つ」を体が覚えるまで。

⑮ 災害・サバイバル

農村の暮らしは、それ自体が備えになります。保存食の棚は非常食庫、井戸と薪は生きたライフライン。ここでは最低限の型だけ。火起こしは野外の技を参照。

水と火

  • 飲み水の目安──1人1日3L×最低3日分。断水時はまず風呂・やかん・ペットボトルの水を確保。
  • 煮沸──沢や井戸の水が不安なときは、沸騰させてから1分以上を目安に。濁り水は布でこし、砂利→砂→炭の簡易ろ過をしてから必ず煮沸。ろ過だけでは飲まない。
  • 雨水利用──降り始め10分の水は屋根の汚れが流れるので捨てる(初期雨水カット)。ためた雨水はトイレ・洗い物・畑用にし、飲用にはしない。
  • 停電と火──カセットコンロ+ボンベの備蓄が最強。車のシガーソケット+インバーターで充電。冷蔵庫は開けなければ数時間冷たさが持つ。

食料と手当て

  • ローリングストック──特別な非常食より、普段食べる米・味噌・乾物・缶詰を多めに買い、食べた分を買い足す回し方。この図鑑の保存食の章が、そのまま備蓄リストになる。
  • 農村の強み──米+味噌+梅干し+干し野菜+根菜の土中貯蔵で、主食も塩分も発酵食品も自前でそろう。
  • 応急処置の入口──救急車を呼ぶか迷ったら #7119(救急安心センター)。蜂・マムシ・かぶれ等の危険生物対応は今後の章で詳しく。
  • 情報──停電時はスマホより省電力なラジオが頼れる。乾電池の号数を家族で揃えておくと融通が利く。

⑯ 子どもの自然遊び

遊びはいちばん深い学び。それぞれに「学べること」を添えました ── いのちのメガネ(かんじる・たどる・つなげる・いただく・かえす)の入口です。

⑱ 農村文化 ── 行事は農事暦とセット

村で一番古い森は、たいてい神社の鎮守の森です。切らずに残されてきたその森は、土地本来の植生のタイムカプセル。そして年中行事の多くは、田んぼの暦とぴったり重なっています ── 春に田の神を迎え、夏に先祖を迎え、秋に実りへ感謝し、冬に藁で神域をつくる。行事をたどると、米づくり一年がもう一度見えてきます。

⑳ 農村仕事図鑑 ── 生業のカタログ

農村で暮らしを立てる道はひとつではありません。それぞれ「始め方」の一歩目まで書いています。

㉓ パーマカルチャー ── 図鑑を貫く設計のレンズ

パーマカルチャーは「permanent(永続する)」と「agriculture/culture」を合わせた言葉で、自然の仕組みをまねて暮らしを設計する考え方です。この図鑑に並ぶ知識 ── 雑草も堆肥も水路も祭りも ── を「どうつなげて、どう組み立てるか」。その背骨がこの章です。

地球への配慮 Earth Care 人への配慮 People Care 分かち合い Fair Share 三つの倫理 ── 迷ったらここに戻る

土・水・森・生きものを損なわないこと(地球)。自分と家族と隣人が健やかであること(人)。余剰は抱え込まず循環へ返すこと(分かち合い)。技術より先に、この三つが判断の物差しになります。

設計原則 ── 農村での使いかた

観察してから行動する手を入れる前に一年見る。雪の溶け方が暖かい場所を教える
問題を資源に変える雑草はごちそうと堆肥に、渋柿は干し柿と柿酢に、生ごみは土に
小さく始めるバケツ稲、プランター1つ、ぬか床1つ。失敗が小さいと学びは速い
多様性を活かす単作より混植。虫を全部敵にしない(⑦)。種類の多さが保険になる
循環をつくる出たものは戻す。⑰㉒の円をどこでも小さく再現する
エネルギーを蓄える雨水タンク・薪棚・保存食(⑫⑬)。豊かな時に蓄え、乏しい時に使う
縁(エッジ)を活かす畑と林の境、田と水路の際 ── 二つの世界が出会う場所が一番豊か
自然に働いてもらう鶏に耕してもらい、菌に分解してもらう(⑥)。人は段取り係

観察力 ── 答えは自然が教えてくれる

農村でいちばん大切なスキルは観察です。買う前に、植える前に、掘る前に ── まず見る。八つの対象を、季節を変えて何度も。

太陽どこから昇り、どこに影が落ちるか。冬と夏で見比べる
強い風はどちらから。木の傾きと洗濯物が教えてくれる
降った水がどこを流れ、どこにたまるか。長靴で歩く日をつくる
地形高い所と低い所。霜は低みにたまり、冷気は谷を流れる
湧くところ・乾くところ。井戸と水路の位置には理由がある
握って団子になるか、色、匂い。ミミズはいるか(②)
生きもの誰が来て何を食べているか。足あとで読む(⑧)
季節毎年「最初に咲く花」を記録する。それが自分だけの暦になる

世界の事例 ── 外から見ると日本が見える

日本里山人が使うことで保たれる二次的自然。世界が循環モデルとして注目(⑨)。
オーストラリアパーマカルチャー発祥1970年代、ビル・モリソンらが体系化。世界中に広がった。
フランスアグロエコロジー生態学で農業を設計し直す考え方を、国の農政に採り入れた。
ブータンGNH(国民総幸福)GDPでなく幸福で国を測るものさし(㉗へ)。
キューバ都市農業石油が止まった90年代、都市の空き地を有機菜園に変えて食を守った。

㉔ 農村デザイン ── 一つの生態系として組む

家・畑・果樹・池・コンポスト・鶏小屋をバラバラに置かない。よく通うものは近くに、手のかからないものは遠くに ── それだけで暮らしの動線は劇的に変わります。

1 毎日 ── 菜園・ハーブ・コンポスト 2 数日おき ── 鶏・果樹 3 季節ごと ── 田畑・池 4 年に数回 ── 里山(薪・きのこ) 5 手を入れない ── 奥山・観察だけ 家(ゾーン0)から遠いほど、手をかけない

要素をつなぐ ── 置き場所が仕事を減らす

ゾーニングと同じくらい大事なのが「つながり」です。鶏小屋を果樹の下に置けば、落ちた実が餌になり、フンが肥料になり、鶏が虫を拾う。コンポストは台所から10歩以内 ── 遠いと続きません。池のそばの畑にはカエルという虫の番人が住み込みます。

合言葉は「一つの要素に三つの役割を、一つの役割に三つの要素を」。鶏は卵・肥料・除草の三役。水やりは雨水タンク・池・井戸の三本立てなら、一つ欠けても暮らしが止まりません。

㉕ 水のデザイン

水は「ためる・しみこませる・ゆっくり流す」。一気に流す設計は、洪水と渇水を両方連れてきます。雨が降ったその場所で、できるだけ長く水に働いてもらうのが基本です。

等高線の溝 掘った土で土手+果樹 ゆっくり地下へ スウェイル ── ためて・しみこませて・ゆっくり流す

㉖ 自給とコモンズ

自給の階段 ── 100%を目指さない

自給は0か100かではなく、階段です。今年の1%を増やす。それだけで買う暮らしから「つくれる暮らし」へ体重が移りはじめます。

コモンズ ── 私有でも公有でもない持ち方

農村には「みんなのもの」が生きています。使う人が手入れする人 ── この作法が、資源を百年単位で保たせてきました。

㉗ 幸せのものさし

農村の豊かさは、GDPにはほとんど映りません。自分で育てた一皿、頼り頼られる距離感の仲間、窓の外の景色 ── 買っていないものほど、暮らしの土台になっています。ブータンはこれを「GNH(国民総幸福)」として国のものさしにしました(㉓世界の事例)。

農村の時間は時計ではなく、季節・月・太陽・生きもので流れます。朝は鶏の声で始まり、「ノビルが出たから春」「赤とんぼが下りたから稲刈り」。①の二十四節気は、その時間の流れの地図です。

問いをひとつ ── あなたのいちばん豊かな時間は、いつですか。それは買ったものでしたか。

危険な「そっくりさん」

食用の草のすぐそばに、姿の似た有毒植物が生えていることがあります。スイセンの誤食(主にニラと混同)だけで2016〜2025年の10年間に全国74件の食中毒が発生。まずは特に危険な3組を図で覚えてください。

断面と匂いで見分ける ── ニラ・ノビル(食)と スイセン(毒)

◎ 食べられる / ニラ・ノビル 断面:薄く平ら
  • ちぎると強いネギ・ニラの匂い
  • 葉は薄く、断面はほぼ平ら
  • ノビルの球根は小さく、ネギ臭がある
✕ 有毒 / スイセン 断面:厚くV字
  • ほぼ無臭(切っても青くさいだけ)
  • 葉が肉厚で、断面は中央がくぼんだV字
  • 匂いのない株は絶対に採らない・食べない

根と草丈で見分ける ── セリ(食)と ドクゼリ(毒)

◎ 食べられる / セリ 細いひげ根
  • 草丈は低い(10〜15cmほど)
  • 根は細いひげ根のみ
  • 葉に強い独特の香りがある
✕ 有毒 / ドクゼリ タケノコ状の地下茎
  • 背が高い(花期は1mに達する
  • 根元にタケノコ状の太い地下茎(中空)
  • セリの香りがしない。少しでも疑えば採らない

葉の形と葉裏で見分ける ── ヨモギ(食)と トリカブト(毒)

◎ 食べられる / ヨモギ 葉裏は白い綿毛
  • もむとヨモギらしい良い香り
  • 葉裏が白い(細かい綿毛)
  • 葉は羽状に切れ込む
✕ 有毒 / トリカブト 光沢あり・葉裏に毛なし
  • 無臭(もんでも香らない)
  • 葉は手のひら状に深く裂ける・表面に光沢
  • 葉裏は白くない。猛毒なので迷えば採らない

下の表も含め、迷ったら「匂い・形・断面」を自分の目と鼻で確かめるのが鉄則です。

有毒植物間違えやすい相手見分けの決め手
スイセンニラ・ノビルの葉 スイセンは無臭で葉が幅広く厚い。ちぎってネギ・ニンニクの香りがしなければ絶対に食べない。
ドクゼリセリ ドクゼリは香りがなく大型(花期は1m)。根元にタケノコ状の太い地下茎。セリの香りがしない株は採らない。
トリカブトヨモギ・ニリンソウ トリカブトは無香で葉裏に白い綿毛がない。ヨモギ特有の香りと葉裏の白さを1枚ずつ確認。
ヒガンバナ・タマスダレノビル 球根にネギ臭がない。ノビルは掘って匂いを確かめてから。
ハシリドコロフキノトウ・新芽の山菜 早春の芽が似る。フキノトウは苞(ほう)に包まれた独特の形と香りがある。

採る場所・調理の基本

どこで採るか

  • 除草剤──不自然に一様へ枯れた・黄変した草地は避ける。公園・線路脇・法面は散布されがち(散布期はおおむね4〜10月)。
  • 汚染──車道すぐ脇(排気ガス)、犬の散歩コース、増水直後の河川敷は避けるか、よく洗って加熱。
  • 許可──畑の畦・私有地は必ず持ち主に一声。国立公園・保護区・都市公園は採取禁止のことが多い。
  • 残す──根こそぎ採らず食べる分だけ。来年もまた会えるように。

どう食べるか

  • 洗う──流水でていねいに。泥・虫・寄生虫対策の基本。水辺の草の生食は清流のものだけに。
  • 茹でる──迷ったら「塩茹で→水にさらす」。アクの強いもの(イタドリ・ギシギシ・ヤブガラシ等)は必須。
  • 少量から──初めての種はまず一口。体質に合わない場合がある。
  • シュウ酸──イタドリ・ギシギシ・スベリヒユ・アカザは茹でこぼしてから。結石の既往がある人は控えめに。
  • 万能は天ぷら──たいていの野草はおいしくなる。香りを楽しむ草はおひたしで。
  • 体調──妊娠中・投薬中・腎疾患のある人は薬効の強い草(ドクダミ茶の常飲など)を控えめに。

⑰㉒ 命の教育 ── いのちの循環マップ

この図鑑ぜんぶをつなぐ、最後のそして最初の章。どのページも、実はこの円のどこかに乗っています。

微生物 植物 動物 堆肥 いのちの土台 分解者 生産者 消費者 いただく かえす いのちの循環 めぐるから、つづく

食べるとは、他の命を自分の命に変えることです。トマトひとつも、土の微生物と、光と、水と、受粉に来た虫の合作。「いただきます」は料理を作った人だけでなく、この円の全員に向けた言葉です。

円のどこかが切れると、全体が痩せていきます。畑の虫を全部敵にしない、生ごみを燃やさず土に返す、種を採って次の年につなぐ ── 生物多様性を守るというのは、この円の線を太く保つことです。

鶏が一羽いると、この円は台所のすぐそばで回りはじめます。

野菜くず 卵と鶏ふん 堆肥 野菜 生ごみ コンポスト 畑へ戻る

これは㉓パーマカルチャーの「問題を資源に変える」「循環をつくる」の、いちばん身近な実践です。

かんじる
土と生きものを五感で観察する。循環の入り口に立つ。
たどる
食卓の一皿から土まで、来た道をさかのぼる。
つなげる
微生物・植物・動物・人のあいだの関係線を見つける。
いただく
命を食べていることに向き合い、残さず使い切る。
かえす
生ごみや灰を堆肥にして土へ戻し、円を閉じる。
知る

この図鑑の各章を円に置いてみる。雑草と野菜は「植物」、堆肥づくりは「かえす」、仕込みものは「人」の知恵。ぜんぶつながっている。

やってみる

今日の一食から食材をひとつ選び、土まで来た道を紙に書いてさかのぼる。生ごみを一週間だけコンポストに入れてみる。

考える

「いただきます」は誰に言っているだろう。この円の外に出ていってしまうもの(プラスチック、使い捨てのもの)は何だろう。

④ 果樹図鑑

植えれば何十年も実る、暮らしの資産。カレンダーの緑は収穫期です。「受粉樹」欄は、1本で実るか・別品種の相手が必要かの目安。

⑦ 昆虫図鑑 ── 畑の見えない働き手

虫は敵ばかりではありません。世界の作物の3分の1は虫の受粉に支えられ、害虫を食べる益虫もいます。「全部殺さない」のが豊かな畑の第一歩。

⑧ 野鳥・動物 ── 足あとで見分ける

畑を荒らす相手も、同じ里の住人。まず「誰が来たか」を足あとで読むことから。対策と共生はセットです。

⑩ 農機具図鑑 ── 使い方と安全

手道具から機械まで。刃物と機械は「切れ味を保つこと」と「巻き込まれないこと」が命。安全は面倒がらずに。

⑭ 郷土料理 ── 47都道府県

郷土料理は、その土地で採れるもの・保存の知恵・行事が結晶したもの。全国47都道府県から、代表を一品ずつ。海の幸・山の幸・粉食・熟れずし ── 気候と暮らしがそのまま味になっています。

⑲ 地域資源 ── 足もとの宝

竹も落ち葉も籾殻も、見方を変えれば資源。買わずに手に入り、使えば里の手入れにもなる。循環する暮らしの材料です。

㉑ 農村体験図鑑

季節ごとの体験を、難易度・年齢の目安・所要時間・学べることで一覧に。100選を目指して増やしていきます。★が多いほど手間や道具・段取りが必要です。

㉘ 100年後への手紙

最後の章は、未来の子どもに宛てた手紙です。この図鑑に書いたことのほとんどは、百年前の人から手渡されたものでした。次は、渡す番です。

この図鑑は道具にすぎません。残るのは、観察する目と、手入れする手と、体で覚えた季節の暦です。まずは種をひとつ採って、来年まく ── それが未来への最初の一通になります。